2014/04/29

鞠つき唄は鞠が唄う

秩序がなくても平和はなり立つ


りえ)
 この間、縄文と弥生の違いは何?と聞かれたときに、縄文は秩序がない状態ですがみんなピース(平和)だった。
 猪子寿之さんという人が「秩序がなくてもピース(平和)は成り立つ」と言っていて、デジタルアートに日本の良さのようなものを流し込んでいる方なんです。猪子さんの作品て、文化伝統に愛をもってうまく作品に表現している。四季折々の当たり前の美しさを感じさせるんです。

モトカ)

 どんな作品なの?

りえ)
 大和絵や絵画を3Dに作って、一見普通の大和絵に見えるんですがそれが動くので空間に奥行きが有るんです。昔の人は世界がこう見えていたんだろうなっていう、秩序が無いように見えるんですがピースがあるという感じ。最近一番好きな人なんですよー。猪子さん格好いいなーと。というか結婚したい! (笑)


鞠つき唄は鞠が唄う


りえ)
 日本の美しさを感じる心って、儚さとか、壊れてなくなるものとか、見えない物とか、不思議な第六感で感じている物へ美しさを感じているんじゃないかなと思うんです。独特ですよね。

モトカ)
 そう言えばりえちゃん「言霊」のことをブログに書いていたでしょう?
 「音」が持つ力って私も興味があって、今日は本を持って来たの。安田登さんの『あわいの力』。能楽師さんが書いたの。能って、異界と現実の狭間の物語を描いていて、舞台の構造自体がそうなっているんだって。楽屋から能舞台までの間は橋が架かっていて、そこをわたる事が異界と現実との狭間を渡るという演出を兼ねているんだね。 

りえ)
 深いな〜。美しいですね。

モトカ)
 能には基本的に2人の演者がいて、主役の「シテ」と脇役の「ワキ」。。
 「ワキ」はたいてい旅人の設定で、物語の中で出逢う相手が「シテ」。そして「シテ」が異界をおろしてくる。「ワキ」は異界へ導くナビゲゲーター役割で、観客は「ワキ」が舞台上で体験する事を通して異界に誘われるという。

りえ)
 面白いですね! 世界感がありますよね日本の文芸には。
 『古事記』とかもそうですけど、美しさを表現するときに、あの世とのこの世を行き来するという設定が深みを出してているんでしょうか。

モトカ)
 「ワキ」はね、「何か欠落を抱えて人生を漂泊する人」なんだって。
 欠落感が有るから恋いこがれる。欠落状態があるから埋めようとする。「物乞い」「雨乞い」と「恋」は同じルーツなんだね。

りえ)
 あははは 深いですね本当に!

モトカ)
 でね、「音」の話なんだけどさ。音楽の3要素ってあるでしょ?「メロディー」と「和音」と『リズム」。それについてこんな事が書いてあったの。

西洋音楽がリズムとメロディで成り立っているように、
能は拍子と節で成り立っています。
リズムというのは、今の時点で存在しない未来をあらかじめ決めてしまうことです。
対して、「今」を刻むのが拍子です。
メロディが絶対的なら、節は相対的。
鞠つき歌の本来の姿は、鞠の弾みに合わせて歌を歌うことです。
鞠つき歌をどう歌うかは、鞠が決めているのです。(『あわいの力』安田登)

 リズムって、テンポが決まると次の発音のタイミングが自動的に決まるでしょ。つまり、最初の音がでたら、まだ存在しない次の未来を決めてしまう。それに対して日本の「拍子」って、あくまで今を刻むんだって。
 鞠つき唄ってあるでしょう? それは、鞠の弾みに合わせて歌を唄うこと。 

りえ)
 なるほど〜!
 なんかそれすごい異界な感じですね。むこうから誘われている感じしますね!「今、ここ」なんですね、ニッポンの表現は常に。


モトカ)
 ということは、ちょっと拡大解釈なのかもしれないけれど、もしかしたら日本人は「未来」ということをあまり考えていないのかも知れないね。いい意味で「成り行き」というか。

りえ)
 出たとこ勝負が得意なんでしょうかね?(笑)


モトカ)
 そうんなんだと思うの。
 私たちの日本の文化、精神性において「未来」っていう概念が無いとしたら、これすごいことなんだけどね、「恐怖」っていうのを持たないことになるんだよね。 あるいは、壊れることまで丸ごと受け入れているというか、そういうタイム感覚ってぶっ飛んでるよね。

りえ)
 ぶっ飛んでますね、優雅とも言いがたいなぁ〜ちょっと超越していますよね。時間の概念が。




いのち」は息、「こころ」は音


モトカ)
 「いのち」という言葉もね、「息の精」から来てるらしい。息(いき)の霊(ち)。
 おろち/大蛇。いかづち/雷。血。乳。「ち」は「蠢く霊力」や「強い霊性」を表すんだって。

りえ)
 素敵な意味合いですね! 

モトカ)
 ハワイの「アロハ」も、「ハ」は「息」のことなんだってね。日本の文化と同じ匂いがする。

りえ)
 そうですね、言葉に思いを込めている。

モトカ)
 鞠つき歌もそうだけど、身体の感覚ってその時々のリアルタイムな感覚。「こころ」っていう言葉も心臓の鼓動音が語源だと言われてる。「ココロ、ココロ、ココロ」って。
 心臓の鼓動は3拍子なんだね。「トクトクトク」じゃなくて「トクン、トクン」。だからね、馬にしろ四つ足なのに3拍子で走るでしょ?「パカパカパカ」じゃなくて「パカラ、パカラ」って。

りえ)
 そうか!なんか心地いいですよね、3拍子の音楽。

モトカ)
 だから今の8beatや16beatの音楽って、もともと持ってるビートと違うから覚醒するらしいんだよね。

りえ)
 確かに! 

モトカ)
 それでね、身体はそういう時々の感覚をリアルタイムに感じるのに対して、心の作用、喜怒哀楽とか感情を含めて、それは時間が生んだ。だから心と身体を行き来するっていうのは、能が異界を行き来するのと同じような出来事なんだね。
 身体への意識が薄くなると、肌への意識も薄くなる。形有る物としての自分の輪郭が曖昧になるんだね。その輪郭を取り戻して再確認するのにもっともふさわしいのが、要するにSEXだということなんだね。

りえ)
 う〜〜ん!なるほど〜。

モトカ)
 それで先週の話を戻してくると、そういった異界と異界を繋げるっていうことをあえて儀式的に繋げていくっていうのが「巫女」だっていう話に繋がって来る。
 一方で、その異界との曖昧な境界との繋がりに最もなじまないのが「文字」なんだって。確かに文字にすることによって輪郭はハッキリするんだけど、多次元的な意味合いを限定してしまう。そういう意味で「言霊」っていうのは呪術的な力がでるという話なんだね。言葉として、文字ではなくて音の側面。

りえ)
 日本の美しい詩や童謡とかって、音を大事にしていますものね。

モトカ)

 私たち羽ラジで、言葉の巫女的な、シャーマン的なことができるかしら?
 皆さんだまされて下さい♪
りえ)
 大丈夫です、十分だませますよ、私たちなら。(笑)
  



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#1 Crave You / Flight Facilities feat. Giselle
#2 Let's Live Forever, Love / Roman Andrén
#3 Anohito (He) / Lemongrass
#4 Ribbon In The Sky / Soul Bossa Trio
#5 ふつうの唄 / 山根麻衣

羽ラジ

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3 件のコメント:

  1. いつも楽しみに番組を拝聴しています。
    回を重ねるごとに面白さが増していて、今後ますます楽しみです。

    音楽の三要素からリズムの民族性に至るお話、なかなか興味深かったですよ。

    近代日本歌曲は、「欧州に追い付け追い越せ」政策の一環で近代化を進めている中において、ドイツリートの形式を取り入れて作られたものですよね。これを物まねに終わらせずに「日本の言葉(リズム・イントネーション)にあった旋律を作ろう」という意思を強く持って作曲に取り組んだ音楽家が何人もいます。

    西洋化が進むながれで、このように日本の音楽と言葉を大事にした音楽家がいるからこそ、現代の日本の音楽があります。彼らは直感的に何らかの危機感を感じたのかもしれません。こういう意識はもしかしたら現在は少なくなっているのかもしれません。

    モトカさんとリエンヌさんのやり取りをお聴きして、「ここにも別の視点で『言葉』を大切に意識している人たちがいるのですね」と思ってうれしくなったものです。同時に自分自身にもそういう意識を思い起こさせてくださった番組に感謝申し上げたいと思います。

    季節の変わり目ですので、どうかご自愛くださいませ~

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    1. 佐野さん、いつもありがとうございます!
      タイム感について掘り下げると、文化的背景云々という以前に身体な感受性や感応性の問題があるということなのでしょうね。論を急げば、時間には個性がある、ということなのかも知れません。

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    2. ありがとうございます。自分がなぜ「このこと」にワクワクするのか?なぜだかわからない心の動きがありますよね。先祖代々伝わる遺伝子なのかもしれないし、前世の記憶かもしれないし、そうではなく自身の体がもつ固有の何かかもしれないし・・・次回放送がさらに楽しみです。皆様が心地よく幸せに日々の生活が送れますように。

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